第2回:アメリカも日本も金利上昇。でも、同じニュースとして見てはいけない

株式投資・お金

連載「金利に振り回されない米国株投資」|第2回/全6回

私が気にしているのは、金利が何%になったかだけではありません。なぜ上がったのか。その中身です。

キートンです。『世界的に金利が上がっています』とまとめると、アメリカと日本で同じことが起きているように聞こえます。

でも、体温が38度の人が2人いても、原因まで同じとは限りません。金利も同じです。前回は債券価格と金利の関係を見ました。今回は、金利上昇の原因を分けてみます。

長期金利は、中央銀行が直接決める数字ではない

まず押さえたいのは、政策金利と10年国債利回りの違いです。

政策金利は、中央銀行が金融政策として誘導する短期金利です。一方、10年国債利回りは市場の売買で動きます。

市場は、これからの短期金利がどのくらいになりそうかに加えて、長期間お金を貸す不安や国債の需給も考えています。そのため、中央銀行が金利を変えていない日でも、10年債利回りは動きます。

『中央銀行が利上げしたから長期金利も必ず上がる』という一本道ではありません。すでに予想されていれば、発表後に長期金利が下がることもあります。

アメリカでは、景気の強さも確認する

私がアメリカを見るときは、まず需要の強さと物価を確認します。

消費や設備投資が強いと、企業はお金を借りて事業を広げようとします。モノやサービスへの注文も増えます。供給が追いつかなければ、物価が上がりやすくなります。

その結果、市場が『高い政策金利が長く続くかもしれない』と考えれば、長期金利にも上昇圧力がかかります。こういう金利上昇には、景気の強さという面もあります。

ただし、アメリカなら全部が良い金利上昇ということではありません。原油高や財政への不安、国債の供給増などで上がる場合もあります。景気が弱くても、インフレが強ければ金利が上がり得ます。

日本では、円安と低金利からの変化も確認する

日本の場合、私は円安による輸入コストと、長く続いた低金利政策からの変化を重視しています。

同じ原油を輸入しても、円安になれば円で払う金額は増えます。企業がその費用を販売価格に上乗せすれば、家計の負担につながります。

同時に、賃金と物価が持続的に上がるなら、中央銀行は特別に低い金利を続ける必要があるかを見直します。これが金融政策の正常化です。

日本銀行の2026年7月の展望レポートも、為替や原油の影響に加え、賃金と価格設定の変化を点検しています。日本の物価を、輸入コストだけで説明するのは不十分です。

日米とも『車』で考えてみる

私は次のようにイメージしています。

アメリカは、よく走る車です。スピードが出すぎて熱くなるなら、ブレーキで速度を抑えます。景気の勢いを見ながら、物価が暴走しないよう調整するイメージです。

日本は、長く強いアクセルの補助を受けて走っていた車です。普通の走行ができるようになれば、その補助を弱めます。これが超低金利からの正常化のイメージです。

日本の利上げも、経済に対してはブレーキ方向です。『金利を上げて景気を加速させる』という意味ではありません。

アメリカと日本の金利上昇の背景の違いを説明する図
金利上昇は日米ともブレーキ方向でも、背景は同じではありません。

どちらも、車の状態を見ながら補助やブレーキを調整しています。図は違いをつかむためのたとえで、両国のすべての状況を説明するものではありません。

もう一つ、長く貸すことへの上乗せがある

10年間お金を貸すと、その間に物価も政策も変わります。投資家は、その不確実性への上乗せを求めることがあります。これを期間に対するプレミアム、つまりタームプレミアムと呼びます。

国債が大量に出てきたり、買い手が減ったりすれば、より高い利回りでないと買ってもらいにくくなります。

金利上昇で国の利払い負担が増えるのは、まず結果です。そこから財政への不安が強まれば、さらに利回りを押し上げる要因になる可能性があります。私は、原因と結果を一緒にしないよう気をつけています。

長期金利を動かす短期金利予想と期間プレミアムの図
長期金利は、将来の短期金利の予想と期間プレミアムの両方で考えます。

私が確認するのは、この3つ

問い 確認するもの
景気が強いのか 雇用、消費、企業の利益
物価が心配なのか インフレ率、賃金、原油、期待インフレ
国債を持つ不安や需給が変わったのか 国債発行、買い手、金融政策、期間プレミアム

アメリカと日本を、私は同じ温度計だけで判断しません。『強い景気が主役なのか』『コスト増なのか』『低金利からの変化なのか』を分けます。

次回は、この金利環境の中で、私が米国株の待機資金にMMFを考える理由を書きます。利回りが一番高い商品が、いつでも一番使いやすいとは限りません。

参考・注釈

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